A Man Called Liam. - リアムという男 -

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 以前ならば真っ赤になるか無表情に止めろと拒絶されただろうが、今は少しの沈黙の後に嬉しいけれどまだ恥ずかしいから止めろと消え入りそうな声に懇願されてしまい、重ねていた手に思い切り力を込めてしまう。 「痛いぞ」 「あ、ごめん」  無意識に握りしめていたと笑うリアムに溜息を吐いた慶一朗だったが、そっとその手を持ち上げた後、右手薬指でキラリと光る指輪にキスをする。 「今日のディナーはもう決まっているのか?」 「いや、まだだな」  今ならある程度のリクエストを受け付けられると慶一朗の横顔に笑いかけたリアムは、オイスターが食べたいと返されてまるでそこにレシピが浮かんでいるかのような顔で空を見上げる。 「オイスターか」 「ああ……白ワインとオイスター。良いと思わないか?」 「うん、良いな、それ」  じゃあ今日はシーフードにしようと頷き、オイスターはレモンを掛けるかスイートチリソースを掛けても良いなとリアムが頷いた後伸びをすると、慶一朗がそんなリアムの髭に覆われている顎のラインにキスをする。 「……そろそろ戻る」 「あ、う、うん……」  慶一朗からのキスが珍しいと言うよりは職場でスキンシップを図ってくれたことに驚きと感激を覚えてしまい、伸びをしたまま石化したように動けなくなったリアムは、じゃあ帰るときに連絡をすると口早に言い残して戻って行ってしまう細い背中を呆然と見送ることしか出来ずに暫くの間そのまま動けないのだった。  そして、そんな様子を偶然通りかかったらしいゴードンとヨンソンが顔をにやけさせ、そんな二人に最早何も言うことは無いと諦めの境地に達している顔のテイラーが見ていることに気付けないのだった。  
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