A Man Called Liam. - リアムという男 -

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2  久しぶりに訪れた古巣の職場ーリアムにとっては雇用契約上の職場という感覚が拭えなかったーで、今朝行ってくると行ってこいのハグとキスを交わして送り出した伴侶との再会は己が思ってる以上にリアムの中に何らかの感慨を芽生えさせたのか、職場のクリニックに戻ってホーキンスに会議の内容、注意すべき事項等を伝えた後、あの病院で久しぶりに慶一朗に会ったことをぽつりと報告してしまうほどだった。  その横顔が珍しい類のものに感じたホーキンスが事情をそれとなく聴きだし、庭のベンチで話をしているときにクイーンズランド州から医師の視察が来ているが、それに遭遇しないように慶一朗が逃げていたことを肩を竦めて伝えるとホーキンスの目が丸くなる。 「ケイさんが何や嫌な感じがすると言っていたからなぁ」 「彼の感性は独特なものがありますからね」 「俺もそう思う」  嫌な感じがする、その言葉に込められているものが後日笑い話で済むようなものであれば良いと思うと、話題の主が巻き込まれた事件を二人同時に思い浮かべているような顔になり、互いの顔にそれを見出して微苦笑して首を左右に振る。
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