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あのような凄惨な事件が再度起こる可能性は限りなく低いだろう、だから今日彼が覚えた嫌な感じはきっと笑えるものに違いない、そう強く願いつつほんの少しの不安をどうしても消せなかったリアムだったが、ホーキンスが顎に手を当てて思案する様子を見せたことに気付き、どうしたとさっきは左右に振った首を今度は傾ける。
「クイーンズランドのドクターの視察ですか……」
「ディアナ?」
「……思い過ごしだと良いのですが」
そのドクターたちの中にケヴィンがいるのではないかと問われて脳裏に思い浮かんだのは、到底優秀なドクターとは思えない表情と言動の男の顔で、何故かその顔の横にもう一人の優秀さを包み隠すこともしないがそれが鼻につく訳ではない不思議な魅力を持った男の顔も思い浮かぶ。
「……ケヴィンとGGが一緒にいる可能性はあると思うか、ディアナ」
「……視察の中に彼がいるのなら、間違いなく一緒にいると思いますよ」
何しろあの二人は同学年の生徒の中でもひときわ目立つ存在だったからと、その二人が今でも頭が上がらない存在であることを教える顔で彼女が零すが、まあ彼らが来たとしてもあの頃のままではないでしょうと、過去の記憶ときっと著名なドクターとして忙しく働く今では振る舞いも言動も違っているだろうそれを溜息に混ぜて吐き出す。
「それを願うな」
「そうですね」
そんな他愛もない話をしたあと、そろそろ季節性の病気も流行りだす頃だからワクチンの準備も行わなければならないと話題を切り替え、事務長のホワイトを含めて相談することを決定すると、今日も一日お疲れさまと挨拶を交わして職場のクリニックを出るのだった。
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