A Man Called Liam. - リアムという男 -

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 白ワインとオイスターが食べたいとのリクエストを叶えるために帰路スーパーに立ち寄ったリアムが纏め買いをしたために大量の荷物をそれでも軽々と抱えて愛車に戻るが、その時スマホが着信を教えてくれたために荷物を積んだ助手席のドアを閉めてスマホを耳に当てる。 「ハロー」 『……リアム?』 「ケイさん?」  回線の向こうの声は慶一朗のものだったが困惑に染まっている気がし、どうしたと問いかけつつ運転席に乗り込むと不明瞭な声が今から帰ると教えてくれる。 「あ、ああ、気を付けて」  俺も今スーパーで買い物を済ませた所だと返しエンジンをかけると、うん、お前も気を付けてと周囲を憚っているような声が返ってくる。  本当に今この通話が繋がっている向こうの世界で何が起きているんだと眉を寄せたリアムだったが、その気配を察したのか、とにかくすぐに帰るからと慌てたような声の後小さな濡れた音が聞こえ、通話終わりの合図のキスだと気づいたリアムが返す前に通話が切れてしまう。  いつもとは違うその焦り方に思わず険しい顔になったリアムだったが、とにかくこちらも家に帰ろうと息を吐き、慌てることなく車を家に向けて走らせる。
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