A Man Called Liam. - リアムという男 -

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 少し前までは帰宅する慶一朗を待ちながらトレーニングをするか溜めていた家事に追われるだけだったが、自覚していなかった寂寥感をこうして埋めてくれる存在がいることに今更ながらに気付き、そっと頭を撫でると嬉しそうな鳴き声が上がる。  デュークを飼う前、昨今の風潮のようにペットを家族と呼ぶ事に違和感を覚えていたが、今当たり前のように家族の中に数えていることに気付いたリアムが微苦笑しつつデュークの前に座り込むと、目線の高さが近くなったことで尻尾がひとつ左右に揺れる。  己の中の気持ちをこんなにも自然に変化させた存在のデュークの頬を両手で挟んで鼻先に額を触れ合わせると、心配しているような甘えるような鳴き声が聞こえ、大丈夫だと笑って頬を撫でる。 「ケイさんも早く帰ってこないかな」  今ここにあの人がいれば最高だしお前ももっと嬉しいだろうと笑ってデュークが最も喜ぶ顔で耳の付け根を強めに撫でると、嬉しさを表すように尻尾が激しく左右に揺れる。  素直な歓喜の表現にリアムの心もふわりとなり、さあ、空腹を抱えてあの人が帰ってくる、それまでに準備をしようと立ち上がると、デュークの耳が何かを確かめるように左右にピクピクと揺れ、まだ帰ってこないぞと苦笑し、冷蔵庫を開けてスーパーで買ってきた食材等を入れていくのだった。
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