A Man Called Liam. - リアムという男 -

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 白ワインを冷蔵庫で冷やし購入したオイスターを食べるソースを何種類か用意を終えた頃、キッチンの己のお食事処近くでリアムの様子を見守っていたデュークの耳がピクリと動き、それに合わせて首を巡らせて音も無くガレージから出入り出来るドアの前に向かう。  デュークがドアの前に移動したことにしばらく経ってから気付いたリアムが本職のシェフのようにティータオルを肩に掛けつつそちらに顔を出すと同時、ガレージのシャッターが上がる音が聞こえてきて、デュークの尻尾と耳が期待に左右に揺れ始める。 「お、ケイさんが帰ってきたな」  人とは違う聴覚や嗅覚を持つデュークは暫く前から慶一朗の気配を感じ取っていたのだろうが、浮かれている気持ちをグッと押し殺しつつーそれでも隠しきれない感情は尻尾と耳に表れていたードアの前で四つ足を揃えている姿に、デュークも慶一朗の前では子犬の頃のように喜んで飛び跳ね回る姿を見せたくないのだろうと気付き、お前なりのプライドかと笑ってしまう。  好きな人には格好いい姿だけを見せたいと思うのは種を越えた雄の本能かと肩を揺らした時、車のエンジンが止まってシャッターが今度は地面に接した音が小さく響く。
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