A Man Called Liam. - リアムという男 -

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 いつもならばドアノブが回転し機嫌の善し悪しはあれども、今日も一日働いてきたと教えてくれる端正な顔が見えるのに中々見えないことにデュークが焦れたように尻を浮かせた時、何かを察したのかすぐさま威嚇の態勢を取る。 「デューク?」  自宅では滅多に見せることのないその姿から異変に気付いたリアムがデュークの横に向かうと同時にドアノブが回転し、いつもとは違って恐る恐るといった風にドアが開いていく。  その動きがデュークの日常との差異を刺激したらしく、思わずリアムでさえも飛び上がりそうな声量で吠えはじめ、ドアから入ってこようとする人影に今にも飛びかかりそうになる。  それにも素早く気付いたリアムがデュークの名を鋭い声で呼び、鳴き声が止んで己を見上げたタイミングで待てとお座りを命令すると、興奮していてもリアムの言葉はしっかり届いているのか、吠えていたことが嘘のように大人しくなりその場でお座りをする。 「良し。良い子だ、デューク」  良く我慢したと褒めて頭を撫で、こちらに来いとドアの前から離すようにリビングへと移動させると、そこでも待てと命じ、開いたドアから入ってきた慶一朗にお帰りと声を掛けようと顔を向けてそのままの姿勢で固まってしまう。 「犬と子どもの躾はドイツ人にさせるのが良いというのは本当だったんだな」 「それもそうだが、あの犬がきっと頭が良いんだ」
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