A Man Called Liam. - リアムという男 -

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 言葉でも態度でもこちらを向いていることを教えてくれる、心身ともに大きな男に出てくるのは己の小ささを見せつけられた溜息だが、負けず嫌いの己が出会った頃からこの男にならば負けても良いと思っていたのでは無いかと唐突に気付き、全ての感情をひっくるめた吐息をひとつ。 「ケイさん?」 「……リアム」 「ん?」  どうしたと問いかけようとする口を封じるように掠めるだけのキスをすると、愛すべき男の顔に驚きが浮かぶが、程なくして見るだけで幸せになれる笑みがじわじわと広がっていく。  この笑顔はきっと己にだけ向けられたものだと今では理解している為、腰に腕を回して肩に懐くように顔を寄せると、中に入ろうと髪に口付けられる。 「そうだな」 「デュークも可愛がって貰っていたし」 「そういえばGGは犬を二頭飼っているって言ってたな」 「ああ」  どんな犬がいるんだろうな、そんな明日には忘れてしまいそうな言葉を交わしつつ玄関から中に入ると、デュークが遅いと言いたげに一声吠えて二人を出迎える。 「リアム」 「うん、どうした?」 「ああ……今日は突然だったけど楽しかったな」 「うん、楽しかった」  あの二人はやはり一緒にいると楽しい、今週の金曜日のディナーも楽しみだと笑ったリアムの背中に飛び乗り、片付けも終わっている、風呂に入って仲良くしないかと背後から囁きかけた慶一朗は、良いなぁという心底嬉しそうな声に了承を貰い、お休み、デュークと就寝前のルーティーンをする為にリアムの背中から飛び降り、待ち構えているデュークをハグし、リアムがそれを終えるのを待っているのだった。  ヨンソンとゴードンの突然の来訪に驚きつつも受け入れた二人と一頭の上、雲の隙間から星が静かに地上を見下ろしているのだった。  
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