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こちらは手土産も何も持たないのに追い返されるどころかディナーも一緒に食わせて貰いましたと、己の言動が振り返れば恥ずかしさを想起させるものだと反省しているヨンソンが上目遣いにホーキンスを見つめると、彼女の口から呆れとも感心とも付かない溜息が零れ落ちる。
「本当に、彼は不思議な人だと思います」
「先生もそう思いますか?」
「ええ。初めて出会った時、働き出してまだ日の浅い勤務先から個人経営のクリニックに出向することに戸惑っている感じはありました」
だがその後、握手をした時、ただ優しさを搾取されているだけでは無い、そこには己の意志が存在する強さを感じ取り、勤務初日に宜しくと言葉を交わした時にはその思いが増幅されていたと返すホーキンスにヨンソンが口を閉ざし、己の中のリアム・フーバー−今は姓が変わってユズ=フーバーになったそうだーという男の輪郭を脳裏に思い浮かべてしまう。
リアムという男を知らない者からすれば、そのお人好しさを利用されているのでは無いか、先程ホーキンスが言ったようにその優しさを利用され搾取されているのではないのかと苛立ちにも似た不安を覚えてしまうが、当の本人はそんな相手の思惑も理解した上で己がやりたいという一心で行動しているのだと教えられ、何度目かの溜息を吐いてしまう。
「ケアンズで会った時、正直な話、お人好しで馬鹿正直な男だと小馬鹿にしてしまいました」
「気持ちは分かりますよ、ケヴィン」
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