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かくいう私も同じような気持ちになったが、一緒に働き、また昨年リアムと慶一朗を襲った事件から立ち直る姿を間近で見守ってきた今、小馬鹿にするような人達に対してあなた達は何も知らないのだと憐憫の情すら覚えてしまうと笑みを浮かべるホーキンスにヨンソンが目を見張るが、その顔が学生時代に他の教師から理不尽に叱られたときにホーキンスが思い知らせましょうと笑ったときと同じだと気付き、背筋を心地よい震えが駆け上がっていくことに気付く。
「あなたが心配のあまり皮肉を言ってしまうのも分かります」
ですがあなたが心配するよりも先に彼を案じ支える存在が今の彼にはいること、それはきっと何よりも心強いことだとホーキンスの諭すような言葉にヨンソンの口から肺を空にするような息が零れ落ち、確かにそうだと何かが吹っ切れたような顔を上げて恩師に学生時代毎日見せていた笑みを見せつける。
「周りから見れば俺はきっとお人好しで便利に利用できる男に思えるだろう、でもそんな存在が一人ぐらいいてもいいと思わないか、そう言われたことがあります」
ヨンソンの顔が納得した人特有の明るさに満ちたことに気付いたホーキンスが続けた言葉はリアムと働くようになり、彼を襲った不幸な事故の後に聞かされたものだったが、ヨンソンが本日何度目かの驚愕の顔で彼女をまじまじと見つめてしまう。
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