A Man Called Liam. - リアムという男 -

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「あいつこそ王子様じゃないか?」 「確かにケイさんの方が王子様みたいだな」  先日の仕事終わりの突然の訪問の際、ディナーの用意を主に行っているリアムを手伝っているのか邪魔をしているのか分からない動きをした挙げ句、自分が手伝えばリアムの仕事を増やすだけだからビールを飲んで大人しく待っていると言い放つだけではなく、実際にその通りに庭でキャンプで使っているハイバックチェアに腰を下ろした慶一朗を思い出したのか二人が呆れたように息を吐き、残り一人は笑みの質を変えること無くにこにことしていた。 「……本当にお前はあいつに甘い」 「激甘だな」  リアムのにこにこ顔とは対照的な苦々しい顔で二人が呟くが、同じようなシチュエーションが無かったかと脳内で目まぐるしく思案し、一年近く前、ケアンズのナイトクラブで今と同じような状況になったことを思い出す。  そして、その時も慶一朗に対して甘いと言われたことを思い出すが、あの時も今もリアムの中には何も変わらない思いが存在していて、それを誰にも壊されないようにする為の笑みへと表情を切り替えると、好きな人は出来るだけ甘やかしたいからと肩を竦めるが、二人はそれに納得出来なかったようで、何度でも言うが甘いとヨンソンが瞼を平らにする。  酒が回っている悪酔い状態になったのかと一瞬ひやりとしたリアムが甘いとダメかとだけ聞き返して返事を待つが、首筋に強い視線を受けた気がして顔を振り向け、強張りそうだった顔を無意識ににやけさせてしまう。
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