A Man Called Liam. - リアムという男 -

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 その行動が意味するところを皆理解出来た為、ゴードンが降参だというように両手を肩の高さに掲げ、ヨンソンも片手を挙げて許しを乞うと、リアムと慶一朗が顔を見合わせた後に嫌味気の無い笑みを浮かべてサムズアップを決め、慶一朗の頬にお礼のキスをしたリアムがひとつ手を打つ。  その音が小気味よく響き、我に返ったヨンソンやゴードンがシャルルに飲み物を改めて注文し、皆の前にグラスが勢揃いをしたのを見計らい、ヨンソンが乾杯とグラスを顔の高さに掲げて皆がそれに笑顔で唱和する。 「……それにしてもよく戻って来れたな」  背後のフロアでこちらのことなど気にすること無く踊っていたと思っていたが、何というタイミングの良さで戻ってくるんだと感嘆の声を上げるゴードンに慶一朗が何でも無いことのように肩を竦めて返す。 「あんたらがリアムを苛めるからだ」  声に少しの棘を含めながら笑う慶一朗にゴードンとヨンソンの二人が顔を見合わせて溜息を吐き、そんなマイナスの感情を孕んだ空気を和らげるような声が流れ出して三人が同時にその顔を見つめると、ヨンソンとゴードンが呆気に取られ、慶一朗が別の意味で呆然としてしまうような強い笑みを浮かべカウンターに頬杖をつくリアムがいて、慶一朗が眼鏡の下で目を一度瞬かせる。
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