37人が本棚に入れています
本棚に追加
笑うと片頬にえくぼが出来るそばかすが少し残っている幼い顔が脳裏に浮かび、誰に看取られることも無く生を終えた事を無表情に教師から教えられた日を自然と思い出した二人だったが、自分達よりも先に花を手向けたのが当時の関係者であればと微かに願い、今と違って同性愛は犯罪だとされていた当時を思えばその可能性も低いかと自嘲し、晴れ渡る秋の空を見上げる。
今から随分と遠い昔、ヨンソンとゴードンが机を並べて退屈だったり興味深かったりする授業を受ける中、医者になる為の知識をふんだんに詰め込んでいた脳味噌には、年相応の色恋の話題ももちろん存在していた。
だが、その当時は二人が通っていた学校では退学するだけではなく、同性を好きになるだけで犯罪者扱いをされるという、今振り返ってみればゾッとするような処分が下される時代だった。
人を愛することが罪になる、それを多感な時代に同級生の自らの死という形で突き付けられてしまって以来、ヨンソンは人を好きになるという行為に拭い去れない恐怖感を覚え、ゴードンもまた心の中に深い傷を負っていた。
それを口に出すことは無いが互いに傷の在処を知っている二人が視線だけを重ねた後、今の世ならば愛する人とどのような人生を送っていたのだろうと夢想しては仕方のないことを思い浮かべ、ひとつ息を吐いて墓石を撫でる。
最初のコメントを投稿しよう!