A Man Called Liam. - リアムという男 -

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「そうだろうな。……日常生活では何の役にも立たないがいざという時には誰よりも頼りになる、そんな人が傍にいてくれるとなればそりゃあ強くも優しくもなれるか」 「だろうな」  人と人との関係というのは周囲から見れば理解不能でも当人同士が深い場所で理解しあっているんだなと、昨日の一連の出来事を思い返したヨンソンが満足そうに口の端を持ち上げ、それを見たゴードンの顔にも嬉しそうな笑みが浮かぶ。  不良親父と慶一朗に罵倒されても笑顔で返している二人だったが、ふと足下を見れば風雪によって時の流れが刻まれた墓石が表すように、自分達は人生の折り返し地点を前にしているのだ。  この年まで生きてきたことは畢竟人生の喜怒哀楽の大半を経験してきているという事だった。  笑い飛ばせる過去の出来事もあれば、何十年たった今でも笑うことも口に出すことすらも出来ない悲哀も抱えていたが、それでも自分達なりに今までやって来たのだ。  その時に隣を見れば今も出会った頃と変わらない思いを抱えた親友が傍にいる、それがどれ程己を支えているのかに気付き、それを口に出せるほどの若さがないために口の端に笑みを浮かべて雲が流れる空を見上げる。  これがきっとあの年下の友人二人ならば思いを口に出し、隣にいる人生の伴走者に腕を回して同じ思い同じ熱を抱えている事を確かめるのだろうが、ゴードンもヨンソンもそれをするには少しばかり年を取ってしまい、どちらもスラックスのポケットに突っ込んだ手を引っ張り出すことが出来なかった。
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