Ordinary days.

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 まだ寝ていたいという子どもじみた顔を見せながらも、己にしか出来ない仕事をするために今日も一日働くつもりだと睡魔の残滓が色濃く揺蕩う目で起こしに来た愛嬌のある顔を見上げたのは、杠慶一朗という長年暮らしている国なのに自己紹介をするたびに必ず聞き返される氏名を持つ端整な顔立ちの男だった。 「おはよう」  朗らかな朝一番の挨拶としては最高の笑顔で頬にキスをされて頷いた慶一朗だったが、まだ眠いと欠伸をし、のそのそと掛け布団から這い出してくる。  その姿がナマケモノそっくりで、ミスター・ナマケモノと起こしに来た伴侶のリアムに笑われてしまい、じろりとその顔を睨むものの、睡魔の残滓が予想外のしつこさを見せていて、欠伸をしながらリアムの分厚い胸板に額をぶつける。 「今日の卵料理は何が良い?」  お望みのものを用意するからシャワーを浴びて今日も世界一イケメンなあなたになって来いと跳ね放題の髪にキスをしながら笑われ、黙ったままぐりぐりと頭を左右に振ると、くすぐったいと笑い声が上がる。 「……ベティーが食いたい」
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