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出会い編 第十五話
***
なぎ視点
それから、事務作業のことを教えてもらい、帰っていいよと言われたので、お先に失礼しますと言って会社を出た
今日は何も進展無し…
進展無しというか、相手のことはすごくわかった
明日も頑張るぞー!と意気込んだ
そして、翌日
出勤すると、フロワ全体がピリピリしていた
先輩に聞いてみると、昨日話していた社長の見回りの件だという
昨日は、会議してたり忙しがったから視察はないだろうと思って、そんなにかっちりとしてなかったんだけど…ということを話された
予想としては、金曜日に来るんじゃないかと言われた
「いやだってよ!中途採用でも、新人は新人だし、七瀬くん注意しても…ってなるから…1週間の間、覚えさせないと行けないこともあるし…」
「でも、今日来るんじゃないかと予想してる人もいるし…まぁ、この張り詰めた空気は1週間変わることないと思うよ」
まぁ、僕は与えられた仕事を教えられながらこなすだけだし
会ったら会ったで、薬飲んで、発情すればいい
「まぁ、仕事しよっか」と促され自分のデスクに座る
そして、噂をしていたからなのか、何なのかは知らないけど、社長が1階から順番に見ていく見回りが始まった!とどこからか情報が入った
ゴクリっ…ここで、ミスってしまったら終わり…
さすがに、今薬飲むのは危険なので、もうちょっと後にする
「ふぅ~」と息を吐く…
緊張してきた
すると、隣の先輩から「そんなに緊張しなくていいよ」と言われた
そう言われたけど、心臓はバクバク
「そういえば、見回りの仕方教えてなかったね」
「まず、社長がここに来たら、廊下に立って、まずは挨拶をするの」
「挨拶は社会人の基本だからね」
「それから、仕事ぶりを見たりするの」
なんか、そんなところで発情しちゃっていいのかなとか思うんだけど、仕方ない、これもスパイのため!と言い聞かせる
ここは、4階だからもうすぐ着くはず…とフロワ全体に緊張が走る
が、一向に来ないので、1人の社員が5階に行ったら、そこには社長が居て、抜かされてしまったとの事。
それを聞いた先輩達が「こんなことなかったのにね~」と言う
なんなんだろう
「最後に来るんじゃない?」
「いや、もう見捨てられてるかもよ!」みたいな憶測が飛び交って、フロワ全体はピリピリした雰囲気から騒がしくなった
だけど、僕はいつ薬飲もうか…とばかり考える
一錠しかないし…失敗したら…と考えるだけで背筋が凍る
そして、運命の時
僕は、手のひらに薬を置く
そして、デスクに置いてあったペットボトルを取って口に薬を入れようとした時
“先輩とぶつかった”
そして、薬は飛んでいきペットボトルはデスクの上に水が広がる
「あぁ~ごめんね!七瀬くん」
「あ、全然大丈夫です」と言いながらも内心、焦りまくり
ど、どうしよう…こ、これで失敗したら…
「とりあえず、片付けは後にしよう!」と言われ、断れず、僕は先輩と一緒に、廊下に立った
まだ、薬のことで頭がいっぱい
僕は、このミッションを達成しなければ、僕には…未来がない
この先、どうやって生きていけば…再就職か…それともこの会社に務めるしかない
もう、ダメだどっちみち…
なら、良い社員で居てやろうじゃないか!もう、やけくそだよ!
そして、社長が隣の部署を挨拶してこちらに来る
やっぱり、先輩達が言った通り、遠目から見てもイケメンな人だ
「ほら!七瀬くん!気になってた社長がもう近くに!」と僕にワクワクしながら言ってきた
が、僕は今社長に興味は無い。いや、ほんの少しだけならあるけれど…別にキャー!ってなる訳でもないし
というか、さっきまで、先輩のせいで、という憎い気持ちはあったけれど、このウキウキしてる先輩を見てスッーっと消えていく
そして、とうとう僕達の部署の所に来た
「おはようございます!」と全員で頭を下げる
隣で伊藤先輩が顔を上げたのを横目で見て僕もあげる
すると、何故か社長が目の前にいて、バチッと目が合う
その瞬間に、身体が熱くなった
こ、これはもしや、発情!で、でも!なんで!?
いや、そんなことは…と思い、もう一度顔をあげる
目がまた瞬間、ゾクッと身体が震え上がった
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