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「これ、陽菜(ひな)ちゃんにあげる」
夏休みが始まった日の朝。
航(こう)は、ひとつ年下の陽菜に、ママからもらったひまわり柄のブローチをあげた。
今日は、陽菜の六歳の誕生日なのだ。
「ありがとう」
眩しい光が、陽菜の笑顔に反射する。
「よーし。たくさんとるぞー」
胸を高鳴らせ、神社の境内に入る。
獲物を見つけるや、二人はそうっと歩み寄る。
網を近づけ、一気に。
「よっしゃー!」
航が、網の中でバタバタするアブラゼミをつまみ、満足げに笑う。そして、陽菜が持っている虫籠に入れる。
社まで来たところで、航が水を飲みながら、
「いま、五匹か」
まだ目標の半分。帰りは反対側の並木だ。
最後の一本まで来た。目標まではあと一匹。
その幹の、ちょうど航の目の高さに、不思議なかっこうをした二匹のアブラゼミを見つけた。
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