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11.
週末、リュウさんと佐治さんの店で、文さんにすがってオイオイと泣く私の姿があった。そんな私をリュウさんが見て
「おお、いいねー。生きてる、生きてる。」
と笑顔で頷きながら通り過ぎていく。
「生ぎるっで、づらい~・・・。」
泣きながら訴えるけれど、文さんはにこにことして私の頭を撫でるだけで無言を貫いている。佐治さんが通り過ぎながら
「あー、あー、人はどうしてこんなにも色恋に左右されんのかねぇ。」
と首を捻っている。
「私が知りたいぃ~・・・。」
また訴えるけれど、文さんは相変わらずニコニコ顔だ。
以前「ファイトーいっぱーつ」と背中を叩いてくれたオレンジTシャツの常連さんが、遠くの席で
「ファイトーいっぱーつ!」
とグラスを掲げて私に声援を送ってくれた。
「いっぱ~つ・・・」
力なく答えるものの、また文さんに縋って泣きなおした。
ひとしきり泣いて落ち着いた私に、リュウさんが緑茶を出してくれた。
「ありがとう。」
「この間、上司来たよ。」
私はお茶を落としそうになってリュウさんを見上げた。
「ここへ?」
「うん。」
「誰と?」
「1人で。」
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