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「森さん、今日、飲みに行くんですけど、ご一緒にいかがですか?」
ある日、百瀬さんが声を掛けてくれた。
「私、付き合い悪いのに、百瀬さん勇気あるね。」
敬意を表して言うと百瀬さんがえくぼ見せて笑う。
「最近、森さんとたくさん話せてますし、今なら来てくれるんじゃないかと。」
「若者から誘ってもらえるなんてありがたい。参加させていただきます。」
深々と頭を下げると、百瀬さんが可笑しそうに笑った。
指定されたお店に遅れていくと、奥のお座敷個室に案内された。掘りごたつ式のテーブルに10人以上が座っていて、ちょっとした宴会の様相だった。
「あ!森さん!待ってました!」
百瀬さんが言うと、他の人たちも気づいて
「待ってましたー!」
「お疲れ様です。」
と迎えてくれる。予想外に人数が多くて、どこに座ろうと逡巡していると、
「ここどうぞ~」
と、隣の部署の金子くんが、自分の隣に呼んでくれた。
「ありがとう。」
座りながら言うと、金子くんが「いえいえ」と微笑む。
「僕、前に森さんに騙されたじゃないですか?」
「え?」
「30代だって。」
「ああ。」
そういえば、あの会話は金子くんとしたんだっけと思い出す。
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