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達喜は、30代の社員が固まって座っているあたりに呼ばれていった。  チラリと様子をうかがうと、達喜もこちらを見ていて口パクで 『大丈夫か?』 と訊かれた。私がわざと自分のお尻を指さして小首を傾げると、達喜がムッとして自分の胸を指さした。ふふ、と笑って頷き 『ありがと』 と口パクで返すと、達喜が、そっか、とでも言いそうな顔で頷いた。 「なんか妬けますね。」  金子くんに言われてそちらを見ると、私と達喜を交互に見ながら 「同期の内緒話。」 と言われた。 「金子くんの同期は誰?」 「僕、中途だから同期いないんです。」 「そっかぁ。でも人気者だから大丈夫だよ。」 「そーかなぁ。森さんはぜんっぜん、僕に興味なさそう。」 「あは。」 「ちょっと。」  笑いながら、あーだ、こーだと話して飲んでいると、向かいの席に移動してきた百瀬さんが、 「金子さん、森さん口説けました?」 と金子さんに訊いた。私は笑って 「口説かれてないよ。」 と訂正する。
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