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「ここで会うの、久しぶりだな。」
「うん。」
達喜が煙草に火をつけて、フーッと煙を吐く。
「元気?」
煙と一緒にそんな言葉を吐いて、私を見つめる。
「うん。」
「だよな。うん。知ってた。」
達喜が下を向いて苦笑し、つま先で地面をつつく。
「調子良さそうで、良かったって思ってる。」
「ありがとう。」
またつま先で地面をつつき、煙草をふかす。
「若い頃の知生を思い出すくらい、自然に笑ってること増えたよ。」
「そっか。」
「良かったって思ってる。」
「ありがとう。」
「良かったよ、本当。」
「うん。ありがとう。」
しばらく沈黙が続き、降りてきた夜の中で、達喜の煙草の火と煙だけが、色を持っているように見え始める。
達喜に伝えたいことはたくさんあったはずなのに、今は、一言しか思い浮かばなかった。
言おうか、言うまいか。
言葉が出かかっては、喉に引っかかって留まる。
達喜の煙草が短くなり、携帯灰皿の中にグリグリと入れられる様を見ながら、今言わないと、一生伝えられない気がして、私はついに口にした。
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