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「達喜、ごめん。」
「知生、ごめん。」
声も、言葉も、ピッタリと重なって、私たちの間に落ちた。
お互いキョトンとして見つめ合い、同じように小首を傾げる。
「なんで達喜が謝るの?」
「なんで知生が謝るんだ?」
また重なった言葉が、また2人の間に落ちた。
私たちは、その落ちた言葉の中に答えを探すように、2人で地面の上に視線を泳がせる。けれどここに答えはないと悟り、またお互いを見やった。
無言で拳を上げると、達喜も同じようにした。2人で拳を上下に振り、達喜はパーを、私はチョキを出した。
達喜が顎を前に出しながら、私を指さす。私は頷いて、先に話し出した。
「急いでたら、人を押しのけていいのか?」
「あん?」
「イライラしてたら、人を叩いていいのか?」
「なんかの標語か?」
「傷ついてたら、人を傷つけていいのか?」
「ん?俺が答えるの?」
「答えは、全てNOです。」
「まあ、そうだな。」
「でも私は、それをしてしまっていました。」
「信号無視でもしたのか?」
「達喜を傷つけました。」
「ぉぅ!?」
達喜が驚いて間抜けな声を上げる。
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