12.

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「俺はぬくもりを与えるふりをして、ただ知生を抱いてた。同期も上司も逸脱して、知生の苦しみを無視してた。」  じっと見つめると、達喜も私を真っすぐ見た。 「俺といれば、いつかまた知生が前みたいに笑えるようになると思ってた。でも、抱けば抱くほど、知生が空っぽになっていくみたいだった。」  達喜の顔が歪み、また目に涙が浮かぶ。 「怖かった。知生が消えそうで。知生が知生でなくなるみたいで。」  私も涙がこみ上げて 「ごめんね。」 と絞り出すように言った。けれど、達喜は首を横に振った。 「違うんだ。そう思ってたのに、俺、知生を離せなかった。」  達喜が片手で顔を覆い、しばらく黙りこむ。ゆっくりと顔を上げると、悲しそうに私を見た。 「俺の私欲で、知生を俺に縛り付けてた。」 「違うよ!」 「そのせいで、知生は前より笑わなくなった。笑ってたけど、本当の笑顔じゃなくなってた。」 「違うってば!」 「でも、俺と会わなくなったら知生は元気になった。」 「それはね、文さんたちに色々気づかせてもらったからでね。」 「俺じゃ、気づかせてやれなかった。」 「達喜・・・やだぁ、その言い方。」  
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