12.

6/10
前へ
/129ページ
次へ
 顔をしかめても、達喜はやっぱり悲しそうに笑う。 「同期に戻りたいっていうのは本心だったんだ。」 「うん。」 「同期に戻って、もう一度、やり直したかった。仕切り直しのつもりだった。」  達喜が壁に体を預けて、下を向く。 「でも知生は、俺からすっぱり離れて行って、新しい居場所を見つけてた。」 「違うんだってばぁ・・・。」  悲しくなってきて、眉を八の字に曲げて訴えるけれど、達喜の心には届かないようだった。 「俺が死ぬかもって心配して、痔の手当ても引き受けてくれて、一瞬浮かれたけど、またすっぱり置いていかれた。」  拗ねたように言う達喜が私を睨み、私は首をすぼめる。 「ごめん。私が考えなしで、配慮が足りなくて、軽率だった。」 「あ、俺、本当に肌だけ求められてたんだって思った。」 「違うの!ごめん!でも本当に違うの!」 「それなのに調子こいて、知生の全部手に入れようとしてたから、知生には重かったんだろうなって。いつか、はっきり縁切り言い渡されるんじゃないかと思って、最近は2人きりになるの避けてしまってた始末。」 「そうだったの?」
/129ページ

最初のコメントを投稿しよう!

70人が本棚に入れています
本棚に追加