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 もう謝る以外にできることがなくなっている後輩に、私は優しく微笑んで 「いいんですよ。」 と言った後、フッと真顔に戻して続けた。 「ある時はお腹の出ていない40代、またある時は若く見える40代、しかしてその実態は、年相応にお腹が出ていない、老け顔の30代だったのですっ!」  腰に手を当ててガハハと笑って見せると、後輩はますます固まって私を見つめた。 「ほんと、すみません。」 「いいんだって。」  歩き出すと、後輩がトボトボとついてくる。 「本当はおいくつなんですか?」  ぼそりと訊かれて 「ハート強いな。」 と言うと 「もうこの際なんで。」 と開き直られた。 「42。」 「へ?」 「本当は42。」 「え?30代っていうのは?」 「嘘。」 「コノヤロウ・・・。」  怖い笑顔で後輩が迫ってくるので、私は笑いながらスキップした。 「40過ぎたらスキップしちゃいけないんですよ。」 「へー。50過ぎたらなにしちゃいけなくなるの?」 「思い出し笑い。」 「なんでよ。」  私は吹き出してしまい、リズムが崩れてスキップもうまくいかなくなる。
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