突然の大捕物劇

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 必死で追いかけた。  苦しくなりつつある息でなんとか叫ぶ。 「泥棒! 誰か……、捕まえて!」  しかし応えてくれるひとはいなかった。  ちらほらひとはいるのに追おうとするひとはいない……。  なんて冷たいの!  都会のひとときたら……!  違う悔しさにもう一度、歯を食いしばる。  その間にも泥棒は駆けていき、角を曲がろうとした。  いけない、視界から離れたら終わりだ。  どうとでも身を隠せるだろう。  でもいくら全力で走っても追いつけないし、先に曲がられてしまう……!  ダメなのか、盗られたままになってしまうのか。  心臓がさらに冷えたときだった。 「はぁっ!」  突然、角を作っていた塀の上から、大きな掛け声と共に影が落ちてきた。  私の心臓が、違う意味にどくんっと跳ねる。  一体、なにが。  驚いたのは私だけではなく、泥棒もだった。  速度が一瞬落ちる。  それをチャンスと見て、落ちてきた影は、長いものを振りかぶった。  その影が宙に弧を綺麗に描いた、数秒後。 「セイッ!」  聞き慣れた掛け声が響く。  と同時に、バチンッと硬いものがなにかに叩きつけられる音が跳ねあがった。  直後、その影がスタッと地面に着地する。
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