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「ぐぁっ!?」
悲鳴が上がった。
ドサッと私のボストンバッグが、泥棒の腕から地面に落ちる。
「ふぅ」
綺麗に着地した影は、そっと体勢を直し、まっすぐに背を伸ばした。
若い男性。
片手になにか、長いものを持っている。
「ぐぅっ、あぁ……!」
目の前では泥棒が地面に崩れ落ち、手首を押さえ、うめいていた。
どうやらあの長いものに手首を叩かれたようだった。
ぞくっとする。
よく見れば、長いものはたたんだ黒い雨傘だ。
あれほど強く手首を叩かれれば、骨が折れてもおかしくない……。
「あんた。それ、あの子のだろ」
男性……制服を着ているから、おそらく高校生。
彼は静かに言った。
続いて泥棒の襟首を掴み、ぐいっと捕まえる。
「警察に行ってもらうからな」
きっぱり言った彼。
叩きのめされた泥棒に抵抗できるはずもない。
ただ襟首を掴まれ、引きずられるままになった。
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