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助けてくれたひと
「ありがとうございました!」
数十分後。
私はボストンバッグをしっかり両手で握りしめ、深々と頭を下げていた。
もちろん助けてくれた彼に。
「いやいや。荷物、無事で良かったね」
丁寧にお礼を言ったのに、彼は微笑で手を横に振るだけだ。
「はい! あなたのおかげです」
本心から言い、もう一度頭を下げる。
「きみ、遠くからきたのかな」
彼に聞かれて、私は一気に恥ずかしくなった。
すぐに『田舎から来たらしい』とわかる様子だったなんて。
「はい……、今度、東京で暮らすために上京してきたんです」
ちょっと気まずくなりながらも言った。
彼は納得したようだった。
「なるほど。都会にはひとも多いし、隙があれば狙うやつもいるんだ。気を付けたほうがいいよ」
助言に私はちょっと肩をすくめる。
なんて情けなかったのか。
世間知らずが全開ではないか。
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