〜凪砂side〜

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〜凪砂side〜

その日は海が凪ぎている、 よく晴れた日だった ──────────── 海の上で動けなくなった大型客船からの要請を受けて、早朝から出動することになった。 海難事故に時間なんてものは関係ない。いつどこで起こるかなんて予測出来ないし、陸で起きる交通事故なんかとは違い、正しい地図がある訳でもない。 逆をいえば、信号や歩行者がいる訳でもない為、沈没した訳でない限り、割とすぐに現場に駆けつけることが出来る。 以前勤めた潜水士から、機動救難士に異動した俺は、主にヘリで現場に向かい、救助することが多かった。 別に正義感なんてものがあってこんな仕事をしている訳ではない。失った周りの命に向き合うために、自分自身を保つ為に・・・この仕事を続けているだけかもしれない。 だからこの日もそうだった・・・ー ドラマや映画に登場する救助隊員のように、熱い気持ちで要救助者に向き合うようなタイプではない俺は、マニュアル通りの言葉を掛けて接する。 最後に吊り上げている親子を見て、こんな幼い子どもを船に乗せるなんてどうかしてる。なんて失礼なことを思いながら、救助にあたっていた。 ──…が、、 何を思ったのか、母親が急に動き出してかなり焦った。慌てて手を掴み、声を荒らげて怒鳴りつけた俺を不安げに見上げるその女と目が会った瞬間・・・ー
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