3222人が本棚に入れています
本棚に追加
私たちが乗ると、ぶら下がっていたロープが回収されドアが勢いよく閉まった。
凪砂は先輩のような人に呼ばれて行ってしまい、私は大人しく誘導された場所で静かに座っていた。
そのまま飛び立ってしまったヘリに、驚いている私に、近くにいた隊員の人が優しく声を掛けてくれた。
「大丈夫ですよ、我々と入れ違いで別のヘリが向かってるので。おそらく次のヘリでみなさん救助されると思います。」
なんだ、そうなんだ・・・
さっきの怒鳴っていた男性、このヘリが飛び立った瞬間、絶対怒っただろうなあ。そういえば、脅すような事を言ってきたあの海上保安官に、タオルを頭に押し当てられた後、そのまま雑に巻きつけられたままだった。
私の胸元で眠ってしまっている瀬凪を起こさないように、そっと手を動かしてタオルを外す。
その瞬間、ドクドクと額から血が吹き出す感覚が自分でも分かった。
──…ヤバい
こ、こんなところ凪砂に見られたら、絶対に怒られるっ!!
っと、何よりも先に頭をよぎったのはソレで、自分がいかに凪砂中心で生きているのか痛感した。
震える手で再びタオルを額に押し当てる。
っていうか、さっきより血が多く出てきてる気がする。瀬凪と二人逃げ回っていた時は、とにかく【逃げないと】っという気持ちで頭がいっぱいで、まさか自分がケガをしてるなんて思わなかった。
以前仕事で、お客さんが交通事故にあったとき、事故直後は【アドレナリン】というホルモンが分泌され、痛みをすぐに感じなかったが、救急車に乗った途端に安堵したのか、急に痛みが襲ってきたと言う話を聞いたことがあった。
もしかして、私にもそれと同じ現象が起こってる?ケガをしていると知る前は何ともなかったが、血が溢れ出す感覚を味わってしまい、じわじわと痛みが出てきたような気がする。
何となく視界がボヤけて、タオルを抑えていない空いている手で控えめに目を擦る。
──…まつ毛に血がついてる?
中々視界がハッキリしなくて、強く目をこすってみる。
最初のコメントを投稿しよう!