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カラー剤で汚れた服でどうやって帰ろうかと悩んでいたら、一瞬だけバックヤードに顔を出した吉岡が、自分の上着を私にかけてくれた。
「あぁ、これ貸しだから。今度倍で返せよ」
─…だから、一言多いんだよ
っと言い返すまもなく去っていった吉岡。でもこれも彼なりの優しさだと分かるから、何も言えない。今度きっちりお礼しよう。
その後香菜ちゃんが付き添ってくれて、タクシーで家に帰宅した。香菜ちゃんは最後まで心配そうにしていたけど、家に着いた頃にはだいぶ気分は良くなっていた。
それよりも吉岡が貸してくれた上着は、そこそこいい値段のするブランド物だと、脱いだ時のラベルを見て気がついて慌てた。
ーー・・・弁償しないと
完全に内側が私のカラー剤で染まってしまっている服を見て頭が痛くなった。
とりあえず吉岡に謝罪の連絡をしようと、スマホを取り出したとき、ちょうど吉岡からの着信が入った。
『っあ、吉岡・・・ごめんさっきはありがとう、、それから貸してくれた服だけど、、』
【なぁ、違ってたら悪いけど・・・お前、、妊娠してる?】
──…オマエ、ニンシン シテル?
一瞬、何を言われたのか理解するのに時間がかかった。
【おい、聞こえてる?お前、妊娠してるんじゃねぇのかって・・・聞いてるんだけど】
"妊娠"してる?私がっ?なんでっ?!
【おい、萩花・・・お前妊娠、、】
『ちょっと!そんな何回も"妊娠"とか連呼しないでよっ!セクハラで訴えるよっ?!一回で聞こえてるってば!』
おそらく店から電話を掛けてきてるであろう吉岡の妊娠連呼発言をとりあえず辞めさせる。
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