60人が本棚に入れています
本棚に追加
/79ページ
朽木の部屋で目が覚めると夜で、慌てて陽洋に電話を掛け、帰らない旨を連絡しておいた。
そしてキッチンに向かうと、冷蔵庫の中身を確認し、大鍋でビーフシチューを作ると、ご飯もセットしておいた。だが、まだ肉が大量にあったので、からあげも作ると、トマトのサラダを用意した。
そして、朽木を起こしに行くと、そのまま抱きつかれ、ベッドに押さえ込まれた。
だが、完全に朽木は眠っているので、これは無意識らしい。そして、想像以上に腕力があり、腕を振りほどく事ができない。
「朽木、時間!」
朽木は、俺に抱きついたまま、俺を掛け布団代わりに眠り続けようとしていた。
「ゲ!」
俺は人の姿のままでも、多少は竜の能力が使用できる。それでも、全く振り解けないというのは、相当なものだ。しかも、息が止まりそうになるくらいに、抱きついてくる。
もしかして、これは抱きついているのではなく、締め殺そうとしているのだろうか。
「ギブ!ギブアップ!朽木、起きて!」
ジタバタしていると物音がして、ドアが開くと、そこにハンザが立っていた。
そして、押さえ込まれている俺を見て、微妙な表情をしていた。
「ハンザ!朽木を起こしに来たら、捕まった!助けて!!」
「…………朽木は、寝惚けが凄くて……誰も寝ていると近付かない。今までも、目覚ましを持ってきて、セットするだけにしていた」
ならば、その目覚ましをセットして欲しい。
「目覚まし!」
「…………これだよ」
その目覚ましというのは、かなり巨大なもので、バケツくらいあった。そこに、お椀のようなベルが付いている。
「セット!」
「これ、かなり、うるさいよ…………」
そして、ハンザは目覚ましをセットすると、部屋を出た。
「え?ハンザ?」
そして目覚ましを見ると、小さく光った感じがした。
「ジリリリリリ!!!!!!ジリリリリリ!!!!!!!!!!!!!」
「え!!?うぎゃ、あああ!」
これは、脳天に響くうるささで、耳を塞ぎたいが手を抑え込まれてしまっていた。そして、手を抑え込まれているので、目覚ましを止める事が出来ない。
「うわああああ!耳が痛い!!」
俺は転がって目覚ましから遠ざかろうとしたが、どうにも朽木が邪魔をする。
「ピコン、ピコン、音量が上がります」
しかも、目覚ましから変なアナウンスが流れている。
「ジリリリリリリ!!!!!ジリリリリ!!!!!」
「うわあああ…………」
もうベル以外は、何も聞こえなくなっていた。そして、再び音量が上がるアナウンスが流れたので、俺が目を閉じると、少し腕が動いた。
そして、その隙に逃げようとすると、朽木が俺の頭を掴んで、自分に近付けていた。そして、目を細めたままで、俺を見つめて首を傾げていた。
最初のコメントを投稿しよう!