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自分よりも薄い紫色は、俺を映している。
あいつが俺しか見ていないのは、その視線からわかった。
言葉は交わさない。
でも、その温もりはいつも感じていた。
黒マスクの下で、言葉を紡いでいる。
仔狐も、俺には見えた。
何故、俺がコノオに付き合っていたかはわからない。
でも、子供ながらに好きだったんだと思う。
そうでなかったら、身体を許す事などしない。
でも、最後までコノオは「好き」と言わなかった。
だから、俺も言わなかった。
あいつは喋るのが嫌いだったから、身体で示したんだと思う。
俺が好きな人が出来たと言っても、コノオの反応は淡白だった。
自然消滅。
背徳的な関係は、人知れず生まれ、消えた。
この事はアキノには言っていない。
言ったところでギスギスするだけだ。
この思い出は、墓まで持っていくつもりだ。
薄紫の視線を感じる。
でも、レオは知らないふりをしていた。
クラスメイトである帝国院コノオは、近寄りがたい雰囲気だったし、関係が無かったからだ。
「おい、焼きそばパン売り切れるぞ!」
イズモのごつい手がレオの背中を叩いた。
ダイチも同じ事をされ、欠伸をして目を擦る。
急げ急げ、と教師の叱咤も無視して廊下を走り抜けた。
司レオ、神田イズモ、早乙女ダイチは連んでいた。
しかしイズモとダイチは他部活から助っ人に呼ばれるくらい運動神経が良い。今の時期は特にそれで忙しくしていたりした。
そのためレオは一人で昼食を摂る機会も多くなった。
一人というのは、なんともつまらない。
だから、その日は気まぐれにいつもの視線に答えたのだ。
「帝国院、一緒に飯食わね?」
他のクラスメイトが見たら驚く組み合わせなのだが、コノオは立ち上がり、視線で着いてくるよう促す。
レオは正直驚いたが、なんだか面白くなりそれに着いていった。
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