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罰の隣で希う。
神様のその言葉を聞いた時、最初に僕が思ったことは一つ。“は?なんで僕が?”だ。
何故なら僕は悪い事なんて何一つしていない。罪があるとしたらそれは、今隣にいるこの男ただ一人ではないのか。
「納得ができません」
本来、神様にこんな口答えなどしてはいけないのかもしれない。それでも言わずにはいられなかった。こんなものは不平等だ。到底承服できるはずもない、と。
「僕は、この世界を守るため死ぬ気で勇者として戦いました。その結果魔王を倒して力尽き、死ぬことになったわけですよね。天国に行けるか、幸せな転生をするのは筋というものでは?どうして、そこの魔王と同じ扱いなんですか」
そう、僕は勇者。
世界を守るため、命がけで魔王と魔王軍と戦い、世界を救った勇者なのだ。
それなのに今僕は魔王と並んで神様の御前にいて、神様にこう言われたのである――お前たち二人にこれから罰を下す、と。
「罰って?僕に何の罰があるっていうんですか?」
不満を漏らすと、目の前の金ぴかのおじいさん――の姿をした神様は、疲れたような顔で首を横に振ったのだった。
「おぬしは、自分に罰があることに気付いていない。気づこうともしていない。即ちそれが罰なのだ。おぬしたち二人を地獄に堕とすことはせぬが……いや、ある意味地獄なのかもしれぬ。これからお前たちには、共に転生し、いくつもの世界を巡ってもらうことになるのだから。それも、元の記憶を保持したままでな」
「はあ!?」
それを聞いた時、魔王の方は何かを悟ったらしい。死んだ時の重たい甲冑姿のまま、長い黒髪をだらりと垂らして首を垂れる。
ちなみにこの魔王、筋骨隆々の美丈夫、というタイプの魔王だった。項垂れているような姿さえ妙にサマになっている。それがまた腹立たしい。
「謹んで罰を御受けします、神様」
なんだよ、と僕はますますイライラしたのだった。お前は何で、こんな意味不明な罰に質問一つしないのかと。
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