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水曜日のお昼過ぎ、私は決まって、渡り廊下を通る。
水曜日の五限目は選択授業。
公立高校の美術教師である私は、毎週この時間、職員室を出て渡り廊下の向こうにある美術室へと向かう。
その途中にある、目測五、六メートルの渡り廊下。時間にすればほんの何十秒かで通過出来る。
その僅かな間に、雨が降る。
私が渡り廊下に差し掛かると、必ず雨が降る。
ぱぱ、ぱらら、と雨の始まりを報せる合図のような音もなく、薄いカーテンをさっと引くように、雨が降る。
そして渡り終える頃には上がっていて、空はすぐさま晴れ渡る。潔いほどのにわか雨。
曇天の日ならまだわかる。けれど、まっさらな綿のような白雲からも、時には雲ひとつないカラリと晴れた青空からも。
羽衣のようなその雨は、水曜日、必ず降る。
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