秘密は嘘

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こんな日にわざわざ外出なんかしないで家に籠っていたほうが安全だと、わかってる。わかってはいる、んだけども… 相手が晃だという理由でノコノコ来てしまう自分の意志の弱さに自分でも呆れる。 (だって、でも少しでも一緒に居たいんだもん…しょうがないじゃん…) 母さんが父さんのフェロモンの香水を持っていたように、オメガは好きになった相手の匂いに包まれたいとおもってしまうらしい。 特にヒートサイクルが始まるとその欲求は顕著で、相手の匂いがあるのと無いとでは大違いだ。無いと不安で情緒不安定になり根拠のない喪失感に苦しむ。 (それに、多分…俺が発症したのって晃に恋したからだとおもうし) 優性オメガである女性が成長と共に妊娠する身体になっていくのとは違い劣性オメガは「発症」という言葉で表されるように、いつどのタイミングで妊娠可能な身体になるのかそのメカニズムさえ未だ解明されていない。 最低年齢は5歳から最高年齢は生涯を閉じるまで発症しなかった人もいたらしい。 ただ、一説には「運命の番」と出会ったか恋をしたことによってその身体が変化するらしい、なんて嘘か本当かわからない噂もある。 (もし、もし晃が俺の運命だったら…) ポーっとした頭で向かいに座る晃を見ると、目が合った。 「悠馬、…やぱり調子悪いか?泣きそうな顔するなって」 彼には潤んだ瞳が泣きそうに映ったのだろう。 気遣うように冷たいおしぼりを渡されて、それを「ありがとう」と頷いて顔を伏せ目元を冷やす。 「注文したやつ持ち帰りに包んでもらおうか?」 「いや、大丈夫だって!どうせ家に帰っても余計に凹む時間が長くなるだけだし?」 「それもそうか。ならとことん飲もうぜ」 「俺お酒は…」 「そういえば落ち込んでる時は絶対に飲まないな?」 「うん、クスリと相性悪くって、…ぁ」 (あぁ!なんか服用してるって自分で言ってどうすんだ!!バカっ!バカバカっッ!!) 頭が回ってないからって、こういうちょっとしたことでもバレる原因になったりするのにィ!! 「あ、そうか…。なら勧めちゃ駄目だな。頼んだ分は俺が飲むから気にしないでくれ。あとちゃんと酒代は俺が持つからな?」 「ぇ、聞かないんだ?」 「は?」 「いやごめんなんでもない!へへ…」 「…あのなぁ、落ち込むのを軽くするもんなんだろ?それって別に使ったからって悪いもんじゃねーんだし、言っても言わなくてもどっちでも悠馬に任せるから。そんなにいちいち俺のことは気にしなくていい。」 「あ、うん。ありがと…」 わっとセーフ?なのか?? 何か多分、精神安定剤かなんかだと勘違いしてるっぽいけど…それでいいです!あながち間違ってもないし。 、
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