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(あぁ…俺がアルファのフリをする、なんて周りを欺く嘘を吐かなきゃよかったのかな?)
大学に進学するときの条件がオメガであることがバレない、だったので選択肢はふたつあった。
ベータとして通うか、アルファのフリをするか。
優性オメガと違い劣性オメガはその数が圧倒的に少ないため希少性から未発症でも誘拐の危険性は幼いころからあった。なのでずっとベータで通して生活して来た。
俺も父親もベータとして通したほうがいいだろうと話がまとまりかけたところで母親たちの意見が割れた。
生みの母は最初の条件も反故した未発症のオメガとしてチョーカーを付けるよう言ったが、他の母たちはいっそアルファのフリをしてしまったほうが安全だと主張した。
父はどの意見も正しいと熟考の構えを見せ、このままだと進学が遅れると焦った俺がアルファのフリを選んだ。
どうせいままで誰も好きになったことなどないし、一生未発症のまま生きていくつもりだったせいもある。
あと長らくベータとして生きてきたせいで「なにかのフリ」は馴染んでいたし
なら一度くらいアルファのフリをしてみて父親と兄以外のアルファがどういうものなのかみてみたいという興味本位もあった。
その結果、生みの母以外の母さんたちは正しかった。
最初こそ見目がオメガらしい低身長に童顔である俺にはアルファが寄ってきたが、目印のチョーカーを付けていないことでベータと認識されたし、そもそもが未発症なせいでオメガフェロモンも皆無。時々アルファフェロモン(父親由来)をうすく纏うことで成長の遅いアルファらしいという認識も広まった。
アルファは生まれ持った能力のせいで選民意識が高く未熟なアルファを嫌うきらいがある。
そしてベータも見目がどうあれアルファだと分かった途端に「恋愛対象」から俺を外した。
お陰でそのうちに無視されるようになり恋愛脳ではないベータの友人も得ることが出来、順風満帆なスクールライフのスタートだった。
計算外というか予想外だったのは、その友人になったベータに紹介された晃と友人になったことだろう。
彼はオメガの母親から生まれはしても父親がベータだったので家はあまり裕福ではなく中流。
遠い親戚筋のアルファの子に恵まれなかった上流家系家に中学卒業から引き取られたものの上流アルファ独特の感覚についていけずにベータとばかりつるむ不慣れな男だった。
上流家系でありながら未熟なアルファ(のフリ)の俺と、馴染めず庶民感覚な晃は考え方の違いが面白くすぐに仲良くなった。
というか友人となったベータは、ベータだったから仲良くなれただけでベータだからこそ他とは踏み込んでは仲良くなれずにいた、というのが正しいかもしれない。
ベータは中間だ。アルファでもオメガでもないこの世の大多数を占める性で、性格は友好的で親しみやすい。
けれども根底が中立を好むので平均であることを美徳としているところもある。
アルファの中で異端な部類の俺や晃へ優しく接するのは中立意思で、深くは関わろうとはしない。ベータはベータ同士のほうが気持ちも落ち着くから何も背伸びしてまでは仲良くなろうとはおもってくれない。
中にはアルファと恋仲になり上流になろうとする女子もいるし、見目麗しい優性オメガとのチャンスを伺うものだっているがベータ社会ではそれは夢見るバカと白い眼を向けられさえする。
そのくせ夢見るバカが成功すると一転して英雄扱いしたり、逆に貶めたりするから親切なのか辛辣なのかよくわからない性質(タチ)でもある。
ただ未発症のオメガでありベータとして生活してきた俺からすれば、彼らは友好的で排他的だとおもう。
優しく手を伸ばすのに目に見えない線引きの絶対領域があり相手から近づいてきたら曖昧に躱してそこには入れてくれないのだ。
だから、なのだろう。俺と晃が自然と2人で行動することが多くなったのは。
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