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いま、もしもこの場で俺が「晃が好きだ」といったらどうなるだろうか。素直に好きだと伝えられたならどれだけ自分の気持ちだけは楽になるだろうか。
…言えやしないよ。俺は本当は素直じゃないんだ。嘘つきなんだ。
好きな人に好きと言えないのはお前と同じなんだ。
辛いよな。悲しいよな。…寂しくて、堪らないよね。伝えられない思いって、ただ悲しくて焦るのに、閉鎖的で息苦しい。
息も仕方がわからなくなって出来ないくらいに溺れてる。それがわかるから、俺は、
「あきら、言えないなら言わなくていいし、言いたくないなら言わないままでいいよ。でも…俺は、晃のことすごく、…大切だから。晃の為ならなんだって出来るから…それだけは覚えておいてほしい。」
同じ叶わない恋なら、晃の恋を応援したい。
もしかしたら彼が幸せになる方法があるかもしれない。
そのサポートをしたい。
そうしたら少しは満足するんじゃないかな…多分。
好きな人が幸せになるならそれに越したことはないのだから―――。と。
肩を抱かれる距離、こめかみをお互いにすり合わせて慰め合う。
どれくらいそうしていただろうか?晃はもう酒を飲むのを止めていたし俺ももう食事に集中できなかった。
ただ断片的な言葉をお互いに拾いながら秘密の恋を語らい合い慰めに濡れている。
空いた皿を下げに来た給仕の登場でやっと正気に戻り、もう飲むでも食うでもないこの場はおひらき。
カードで会計を済ませた店外は薄曇りの夜空で星も見えなかった。
「天気悪くなってるね?」
「…そうだな」
ぼやけた月光だけが暗い雲を照らす。
12月も後半の寒夜は物悲しくて肌恋しかった。
ぶるるっと寂しさに身震いすれば、彼はまた躊躇いもなく自分の上着を俺の肩に掛けたのだった。
「ほら、これでも着ろ。ちょっと洗ってないけど寒くはなくなるから」
ぶきっきらぼうな優しさについさっきの失恋もわすれてキュンキュンしちゃう自分が阿呆だとおもった。
やっぱり好き。
だからこそ晃には幸せになってほしいなぁ。お前が幸せになったら、俺も幸せになれる気がする。
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