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「悠馬も彼女欲しくない?」
「うーん、欲しいけどこればっかりはどうしようもないこともあるし」
ふわんと上の空なあやふやな返事に中谷も俺も首を傾げる。
「なんだ、どうした?…なんかあったのか?」
「なんもないよ?」
「嘘つくな、悠馬がそんな風になるの珍しいんだぞ?もしかしてフラれたのか?」
「…ン、まぁ、…そんなとこ。」
悠馬はアルファにしてはかなりの小柄で、さっきの沢村よりもオメガっぽい容姿をしている。全体的に小さくて色白で目が大きく睫毛も長い。
だけど首充てはしていないし、チョーカーだってしていない。なにより毎日一緒にいてオメガ特有の甘いフェロモンなんて皆無でなんなら時折アルファの匂いが鼻をかすめる。
「それで情緒不安定か?」
「だってさぁ、アルファらしくないって……気にしてるの抉られちゃうじゃん」
「…だな。」
悠馬は惚れっぽいし家柄込みで寄ってくるのも多い。
けれどもその容姿のせいなのか、上手くいったためしがない。
それに…
「なら、また明日から休むのか?」
「かもね。落ち込むとどうしても…だし。」
悠馬はあまり心が強くない。学業自体難無くこなすところはアルファ的だが落ち込むと家に籠ってしまう。その点ではアルファらしくないが、そんなことは言えないし言う気もない。
本人も気にしているいつまでも子供っぽい成長の遅さを友人の俺が口出ししてどうにかなるものでもないし、言えば追い詰めているようにも聞こえるから何も言わない。
「なら今日は夕飯まで一緒にするか。愚痴くらい聞けるぞ」
「はわぁ~ありがたや…」
「決まりだなっ」
「うん、助かるぅ~」
影が落ちていた表情に明るさが戻ってホッとする。
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