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まだ心臓がドキドキしてる。
ついさっき友人で親友の晃にオメガの臭いがするといわれた。どうしようって思っていたら、友人の中谷が目端に居たオメガの沢村さんを名指ししたことにこっそりホッとした。
「でもマズイなぁ…」
フェロモン抑制剤を飲んでいるのに匂いが出てしまっているということは今夜か明日にはヒートサイクルが始まってしまうということだろう。
「夕飯も一緒にいられるなら薬の種類ひとつ多くしとかなきゃ…かぁ。」
そう、俺はオメガだ。第一性は男のいわゆる劣性オメガ。
しかもつい半年前に第二性が発症したばかりで、その事実は誰も知らない。
だってもし発症したことがバレたら実家に連れ戻され強制的に見合いからの政略婚が待っている。
発症さえしなければ劣性オメガはベータ男性と何も変わらない。おかげで高校卒業まで何もなく親には呆れられたものだ。
けれどもチャンスだとも思った。
このままいけばただのベータとして生きていけるかもしれないと思ったし、顔も知らない男と結婚させられることもない大きなチャンス。
女性の優性オメガと違い劣性オメガは発症すれば結婚適齢年齢も関係なく見合いして愛のない結婚をさせられることが殆どだ。家長である父にとって俺は愛する息子ではあっても合理的に考えれば家を守るための大きな駒になるのは知っている。
だから結婚ならまだいい。愛人、という可能性だって高い。
それもマーキングされなければ補償義務はないし、子供を産んだらお払い箱だ。
そんな未来、なにがなんでも回避したくなって当然だろう?俺は家柄は良いから愛人になる可能性は低いけど愛のない結婚しか待ってないのもまた事実。
運よく十八歳の成人後の発症だったから通院記録なんかは親に知られず抑制剤も手に入れられるけど、未成年だったら今頃は大学生活はおろか好きでもない男に組み敷かれ子を産む道具になっていたかもしれないとおもうとゾッとする。
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