秘密は嘘

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「はぁー…」 もう何度目なのか溜息ばかりの自己反省会をしているとピロリンっとスマホが鳴る。 メッセージ相手は晃で、待ち合わせの連絡だった。 たったそれだけで、耳が赤く染まる。 ドキドキと胸も高鳴って、慌てて返信を打ちパタパタと手で顔を扇いで熱を冷まそうとした。 「あ、そだ!クスリいまのうちに飲んどかなきゃ…」 常用しているオメガフェロモン抑制剤と追加でヒートサイクル抑制剤を飲み込む。 あと念のためポケットにピルケースを忍ばせ、身支度を整えていく。 (バレたら一巻の終わり、だぞ俺!ちゃんとニヤけけないでいつも通り…『アルファの倉田悠馬』でいなきゃ!) ヨシっと気合を入れて出発した夕方。 待ち合わせは現地集合の丁度お互いの家の中間にあるよく行く中華飯店。 いわゆる町中華ってやつでリーズナブルな割に味は美味いという満点店だ。 ちょっと遅く着いた俺は店内を見回したが、先にコッチを見つけた晃が手を 上げて呼んでくれたからホッと席についた。 「遅かったな。風呂入ってたのか、服が変わってるな。」 「あぁ、うん。そう。…そういえば中谷は?トイレ?」 フェロモン消臭のソープで体を洗って服も消臭スプレーかけてたから遅くなったんだ、とは言えないから曖昧にお茶を濁してからの話題逸らし。 「あー…いつもの、だってさ」 「デートでドタキャン、ってことね」 苦笑いする、でもいつものことだからちょっと予想してた。 晃とふたりきりは嬉しくもあり、そうだったらいいなとほんのり希望をもっていたことだから。 (オメガ臭くないよな…?一応母さんから分けてもらった父さんのアルファフェロモンの香水を靴にうっすら吹きかけてきたから大丈夫だと思いたい…っ!) 母親曰く、アルファは他のアルファフェロモンを好まないので自衛のためにも持っておきなさいと渡されたものだ。 ただ問題はヒートサイクルが始まるとこの父さんの匂いが吐き気がするほど臭いと感じてしまうという事だけ…。なので時々アルファを装いたい時だけ使用する伝家の宝刀みたいなもんで、それが今日でもある。 (うーん、すでにキモチワルイ…) 父さんの匂いでもう吐きそう。ってことはつまりクスリで抑えてはいるけどヒートサイクルが始まりかけてるってことでもある。 、
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