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「俺、…バージンだったのに」
まぁ正確には処女は喪失してない別枠のバージンなわけだけど、それはそれ。どっちにしろ「初体験」には変わりない。
「ごめんなさい」
「そうやって謝られる方が…惨めでムカつく。あのさ、そうやって自分だけが許されようとしてるの誠実なフリしてるけど、そっちのがとっても失礼なんだよっ!」
バチンっ!と、大きな音で晃の両頬を思いっ切り挟むように叩いた。
叩いた衝撃で跳ね返されそうになる手にさらに力を込めれば手の平がジンジン痺れて熱を持つ。
それでもなおギュウゥっと寄せると晃の口がタコみたいになって不細工になって面白い。きっとこんな顔、俺しか見たことないぞ。
その「ブニッ」な唇にそっとキスをする。
「…お人好しで抱かれた馬鹿でいいから、もっとちゃんと俺の事見てよ。」
「うーま、」
潰れた口でもごもご喋るのが、可愛い。
「あのさ、一回ヤッたら…もう俺のことなんかいらない?好きって勘違いしてたって後悔してるってこと?」
聞きたいことはこの際だ全部聞いてしまおう。
告白されてるのにフラれるなら、そのほうがいい。
とはいえ「そうです。」と言われる心構えはゼロだから怖い気持ちもちゃんとある。
だから、これが最後ならとキスした自分の諦めの悪さよ。
顔を離すと、目が合った。
あぁよかった。ちゃんと俺のこと見る気になったんだね。
「後悔なんてしてない。するはずがない」
「でもさっき…」
あ、しまった。責めるような言葉がでてしまった。
こう言うふうにしたら駄目なのに。
「あれは、あれは…仕方ないだろう。俺はアルファで男で、お前も、そうなんだから」
「…どういうこと?」
アルファだろうとどうだろうと「俺」に対して好意をもって下心を抱いたことは喜びしかないのですが?
むしろアルファとおもいながらも好きになってくれたというのなら…真実の愛ではないだろうか。
アルファ男性同士ならもちろん困難はあるかもしれないけれど、それでも…というのなら信じるのは当たり前でしょう。
何を、迷っているのか。何をそんなに恐れているのか。…わからない。
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