ゆめの中の女の子を追いかける話

1/1
0人が本棚に入れています
本棚に追加
/1ページ
 そこはとある世界。景色は高層ビルが並び、上空からは爽快な青空が地上全体を支配している。しかし、この世界は人一人はいない。後は地上、建物や地面には緑が生い茂り、木が生えている。一言で例えると終末の世界だ。 「今日も良い眺めだ………」  俺は高層ビルの屋上から。名前は山上隆(やまがみたかし)。高層ビルの景色、あとは地上を高々と監視するように眺めていた。吹き付ける風、孤独感を身に沁みながら終末の世界を堪能。しかし、変化が無いのは退屈だ。  高層ビル一帯に張り巡らせる窓、建物の裏通りの入り口、様々なヶ所に視線を釘付ける。こんな場所で一人でいるから視力は異次元に高い。  すると、1キロ先のビルとビルの隙間にて。 「何だ?」  そこには白のワンピースを着た女の子。女の子は俺の目を合わせる。 「ちょっと君っ」  俺、山上隆(やまがみたかし)は屋上から跳び降り、ビルからビルに猛スピードで跳び移って壁を走る。ちなみに俺はこの世界では浮遊能力を持っている。  俺は北にあるビルの隙間に向かう。しかし………。 「いない」  駆け付けたが、いない。そしてキョロキョロと眺める。ありとあらゆる勘を働かせて。  すると後ろ数百メートル先の交差点。ロングヘアーで表情を隠した女の子は手を振る。 「そこかっ」  俺は走る。  しかし、交差点に駆け付けた同時に女の子は消える。  次は左側。西の横断歩道に女の子は瞬間移動していた。 「上等だっ」  俺は飛脚し、走る。  だが、駆け付けた同時にまたしても女の子は消える。まるで煙のように。 「クソ、ちょこまかと逃げ回りやがって………」  辺りを眺める俺。  すると次は、女の子は2階のカフェに瞬間移動し、窓際から見下ろしていた。  馬鹿にしやがって………。身勝手に苛つく俺、一方的に追いかけているのは俺なんだけどな。俺はジャンプして2階のカフェに跳び移り、窓を開けて侵入する。  それでも女の子は既にいない。 「何なんだ一体?この世界に、俺以外の人が?」  窓際から景色を眺める俺、本能的に女の子を探す。  すると、北に数キロ先にある高層タワーの入り口に女の子がいた。女の子はタワーの中に消えるように入る。 「逃がすかよっ」  俺は猛スピードでタワーの入り口に向かう。建物の壁をジャンプして移動し、忍者のように突き進む。  そして、例の高層タワーの入り口に到着。タワーを見上げ、中に入って追いかける。  すると………そこも違う世界。文化祭の催し物であるお化け屋敷、カフェ、様々なレクリエーションの教室が存在していた。 「何だここは?」  俺は不審に思いながら廊下を進んで行く。  そして行き着くのはとある教室の引き戸。俺は教室の引き戸に手を掛けようとする。 「わっ!!」  引き戸が開き、中から現れたのはクマの着ぐるみ姿の人。  俺は不思議とビックリしなかった。俺は呆れた表情で沈黙する。  すると着ぐるみを頭から取り。 「ビックリした?アナタ、私の事を追いかけていたですよね?」  正体はあの女の子だった。 「君は一体?何者なんだ?」  俺は尋ねる。 「私は………夢でもあって、そして現実になりつつある存在かな」 「何だソレ?」  女の子の答えに俺はため息。 「そのままの意味、アナタと私は現実で交わる運命よ」 「運命だと?なんてバカバカしい」 「由香(ゆか)。私の名前は高橋由香(たかはしゆか)………」    部屋に目覚まし時計が鳴り響く。そして俺は目が覚めた。あれは夢だった、不思議な夢だ。  俺は身支度を整え、会社に向かう。人々が多く行き交う横断歩道、そして行き交う人々が消え、横断歩道の真ん中で俺は立ち止まる。  視線の先、同じくそこに立ち尽くしているのは一人の女性。そして光と化した脳神経が全身に行き渡るかのように察した。夢の中で見た女の子、名前は確か………彼女の名前は■■■■■■。
/1ページ

最初のコメントを投稿しよう!