1-2 天界

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「嫌だ、もう飽きた。四大魔王なんかになるんじゃなかった。下っ端のぺーペーの方がよっぽど楽しかったよ。しょっちゅう人間界にも出入りできるし、誰と会うのも自由だし。それが今じゃ何事がんじがらめでウンザリだ。口を開けば秘書も召使いも仕事の話。とにかく面白味がないんだよっ」 「なるほどそれが理由ですか」 天使は仕方のない方だと言わんばかりに眉根を寄せた。 「さぞお寂しかったんですねえ。貴方は一人だと何かと自分を持て余す方ですしね」 「子ども扱いするな! 誰が寂しがるか」 「無理しないでいいですよ。重大な責務がありながら、そんなしょーもない理由で遊びまわってるなんて子供もいいところじゃないですか。しかも人間界まで憂さ晴らしに出かけたんでしょ。正式ルートの魔天大道を使うと人目に付くからってわざわざ自力で新しい魔道まで開いて。すごい技術なのに動機が稚拙でトホホですよ」 「うるさいな」 「慣れないことをやるもんだから失敗してるし。ほほう、ご苦労なことだ」  天使はテーブルの上の水晶に手をかざすと、中を覗いて苦笑いした。克己と激突して仰向けに倒れたカラスが映ってる。悪魔は仏頂面で天使に詰め寄った。 「お前はストーカーか」 「当然でしょう、これぐらいの追跡。気配が消えたので安否確認をしたまでです」 「私ではなく天界保有の人間界生者リストで芳賀克己を調べてくれ」 「それを調べてどうするんです?」 天使は憎たらしいほど冷静だった。
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