1-2 天界

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「生者リストで寿命を確認したところで、生き物はみんな死ぬときは死ぬんです。結果がわかってもどうにもなりませんよ」 「それでもかまわない」 「無駄だと言ったら?」  天使と悪魔は数秒間黙りあった。一瞬、二人の間を緊張感が支配する。だが天使が案外簡単に折れた。 「冗談ですよ、言ってみただけです。四大魔王の頼みを断れるはずがない。ただ、珍しくご執心だなと思って」 「別にただの興味だ。犬みたいに懐いてくるから悪さもできない」 「ふーん。ま、そういう事にしておきましょう。結果は調べ次第お知らせいたします。ただ内密にデータベースに侵入しますので少々お時間は頂きます。職権乱用ですから私もあまり表立っては探れない。全力はつくしますが」 「大丈夫だ。こちらも溜まった仕事を片付けるのにしばらくかかる。さすがに秘書がブチ切れ寸前でガタガタうるさい。今も監視されて身動きがとれないんだ。偽物をもっとパワーアップしないと」 「力の入れどころが間違ってないですか? 偽物にかける労力をご自身の業務に注いで下さいよ」  悪魔は天使の苦言を無視した。姿が幻のように薄れていく。 「言っときますけど、今回は貸しですからね」  聞こえているがわからないが、言うだけ言うと天使は水晶に視線を戻した。透明な珠の中に克己が映っている。天使はその様子をじっと眺めていた。
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