2-16 変化

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アスタロトは吹き出した。 「そこまで自信ないのか、お前」 「再試でもまだ受からないんですよ、そんな怖いことできません!そうだ、それよりアスタロトさま、ご自分でおやりになったらいいじゃありませんか、そのほうがまだマシです」 「馬鹿か?」 アスタロトは皮肉たっぷりに微笑んだ。 「俺は悪魔だぞ。治癒魔法なんてやってられるか」 「わかってますとも。それでも、まだ私がやるより御自分でやられた方がいいって申し上げているんです」 ショウはきっぱりと断言した。だが、アスタロトは鼻先で笑った。 「大丈夫だやってみろ。何事も挑戦だ。とにかく俺はだるくってたまんないんだよ」 「そんな……そうですか……知らないですよ」 ショウはしぶしぶ横になっているアスタロトの毛布をはがし、シルクの夜着ごしの胸に手を当てた。  うつむいているショウは、緊張のためか顔色が悪い。手が微妙に震えている。呪文もいい始めたはいいが、どうにもたどたどしい。いつもの優等生ぶりとは大違いだった。  アスタロトは少し悪い予感がして体を起こしかけた。だが、それより一瞬早くショウの呪文が終わった。 「うっっっわっ!!!」  電流が走った。アスタロトはバネ仕掛けの人形のようにはね起きて、そのついでにショウを突き飛ばした。 「馬鹿かお前は! 攻撃してどうする!」 「してないですよ、全力で治すつもりです! だから言ったじゃないですか、これが私の実力なんですよっ」 ショウは半泣きで手をさすった。攻撃の余波を自分でも受けたので火傷したらしい。赤く爆れている。しかしアスタロトのダメージはそれどころではなかった。呪文のどこがどう捻じれたのか、直接心臓に雷が落ちたようなショックを受けたのだ。丈夫な魔族でなかったら間違いなく永眠するところである。 「お前の研修は終わったな」 アスタロトは捨て台詞を残して、ベッドに倒れ込んだ。
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