2-16 変化

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 ショウはやむを得ずアスタロトの看病をする運びとなった。  もともと細々と気のつく性格である。治癒魔法は苦手でも、白衣の天使には向いている。ぐったりして呻いているアスタロトの面倒をかいがいしく見ている。 「さきほど、食堂で作ってきてもらったんですよ、はい、お待ちかねのプティング」 アスタロトはのろのろと、首だけ持ち上げた。 「プティング? 誰がそんなものを食いたいなんて言ったんだ」 「言ってましたよ、うわ言のように」 「今はいらん。水」 アスタロトのわがままに振り回されるのも慣れっこになってしまっているので、特に怒りも感じない。それどころか、病気ならアスタロトが不用意にあちこち動き回らないだけ、お守りも楽である。 「はい、どうぞ」 ショウは水差しから、ガラスの小さなグラスに水をつぐと、アスタロトに渡した。半日横になっていても回復からほど違い。こうして体を起こすのですらひどくのろのろした動きだった。 「⋯⋯ぬるい」 「ここには氷なんて貴重なものはないんですよ」 「ふん」 アスタロトはこれみよがしにコップを指先ではじいた。  ピシっとガラスに霜が降りて、真っ白に凍る。体力もないくせに、ショウに見せつけるためなら魔法を使うアスタロトだった。 「言っておくが、俺は生温い水は最悪に嫌いだ。気をつかえ」 「気配りが足りなくてすみませんねえ」 ショウははいはい、と聞き流した。 「それよりアスタロトさま、よく牢獄から出してもらえましたね」 「まあな」 「大変だったでしょう、あんな日も差さないような場所、寒くてじめっとしてるし⋯⋯」  言いながらショウはハタと気がついた。そういえば、暗くて涼しくて湿気の多い場所ときたら、魔族の最も好む環境ではなかっだろうか。 「そう、むしろ俺は牢の方が暮らしよかった。せっかく睡眠時間を調整してまで人間界に順応しようとしていたのに、あの牢獄に入ったらすっかり体が元に戻っちゃって、油断したところで牢から出されただろう。いやー暑いの、眩しいのって」 アスタロトはショウの考えを見透かして、しみじみと語った。言いながらどっと疲れを感じたのか、よろめくように寝込む。
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