2-18 教会

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 いよいよ炎は巨大な火柱となって天に届こうとしている。  風に煽られた火の粉がショウの頬を焦がした。悲鳴と絶叫が辺りを揺るがし、何も考えられなくなる。  さっきまで幸せそうに祈りを捧げていた人たちはもういないのだ。あの美しい教会に押しつぶされて。  ショウは立ち上がると、猛然と駆け出した。 「どこに行くんだ!」 「伯爵を捜すんです、決まってるでしょう!」  逆上したショウの勢いは、さすがのアスタロトでも止められなかった。病み上がりの体では後ろから追いかけるのがやっとだ。 「伯爵!」  ショウは叫びながら、城の中を走り回った。  長い廊下には誰もいない。祭りのために城の外に出払っているのだ。 「ま、待てショウ」 「待ちません!」 「そんなにやみくもに走ったって」 「これがぼんやり歩いていられますか!」  ショウは血まなこで伯爵を探した。伯爵のいそうな部屋のドアを片っ端から開けていく。だが伯爵はいない。  城の中をぐるぐると駆け上がって、屋上までたどり着いた時、ようやく伯爵の後ろ姿を見つけた。伯爵は屋上にきちんとテーブルと椅子をセッティングして、教会の燃える様子を見物していた。ショウは体中の血液が沸騰したような気がした。 「伯爵!」  ショウが怒鳴ると伯爵は待ち兼ねたようにゆるゆると振り返った。テーブルの上には並々と林檎酒で満たされたグラスがあった。そのガラスに赤い炎が反射している。 「どうだ」 伯爵は言った。 「この余興は気に入ったか」 伯爵は冷笑を浮かべていた。  出会った時に感じた、狂暴な領主そのものだった。怒りのあまり頭が真っ白になった。彼は拳を固めて伯爵に殴りかかっていた。 「おっと」 だが伯爵はそんなショウの動きを予測したように、軽く体をかわした。 「二度も殴られてやるほどのろまじゃない」 「なんて⋯⋯なんてことをするんです!あの教会の人、あれは、あの爆発はあなたがやったんでしょう!」 「ああ、教会のあちこちに仕掛けておいた。座席にも、マリア像にも」 「解放なんて嘘だったんだ!」 「この前殴られたとき、借りは高くつくと言ったはずだ」 伯爵は有無を言わさず、剣の柄でショウをつき飛ばした。
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