2-18 教会

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 さらに教会から炎の竜巻が舞い上がった。ショウは押された肩の痛みを堪えて詰問した。 「なぜです」 「なにが?」 伯爵はゆったりと椅子に座り直した。 「あいつらは罪人だ。罪人に相応の罰を与えただけだ」 「祈ることがなぜ罪なんですか!」 「この領地で私以外に忠誠を誓うなんて許されないからだ。私が領主になってから、宗教は認めないとあれほど言ったのに、やつらときたら甘い餌をまけば簡単に本性をあらわす。命令に従わず欺き続けてきた奴らは反逆者だ」 ショウは怒りで震えた。 「⋯⋯かわいそうに、まだ子供だっていたのに」 「貴様にも少なからず責任はある。私がやつらを処分するのに教会を利用したのは、お前がミサを仄めかしたからだ。祈りなんてなんの役にも立たないことを証明してやったんだ」 伯爵は取り合わなかった。そしてショウから顔を背けると、ようやく追いついて辿り着いたアスタロトに目を合わせた。さすがのアスタロトも息を切らせている。 「これが私だ、アスタロト」 アスタロトは汗を拭った。長い黒髪が熱風にあおられて広がる。 「私を阻むものは許さない。これが唯一の正解だ」 言って伯爵はアスタロトを見た。アスタロトの心の奥を伺おうとしたが、表情が読めない。ショウのように怒りにたぎっていれば、もしくは伯爵を罵倒してくれたらわかりやすいのに、まだ呼吸を整えている。  痺れを切らして伯爵は言った。 「この一件で民衆は嫌でもわかるはずだ。私に逆らえばどうなるのか」 ようやくアスタロトは吐き出すように言った。 「くだらない」 掠れた小さな声だったが、その言葉は伯爵の胸に針のようにつき刺さった。アスタロトは苦々しい表情で続けて呟いた。 「そんなに俺が信じられなかったか」  アスタロトはひどく哀しげだった。急激に攻撃意欲をそがれた伯爵は言葉が出てこなかった。  風が吹いて教会の柱が砕け散る音がする。  そして、最後の残骸まで炭になった。
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