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「諜報員のおかげで俺たちの作戦はほぼ完成しました。でも伯爵は勘がいいから、普段と違う行動をとればすぐに気付きます。だから決行するなら、なるべく雑然としている時がいい。
そうなると祭りはうってつけでした。ただ民衆を巻き込みたくはなかったから、まだ外部者がいない準備の頃がねらい目です。
俺たちはいつでも動けるようにタイミングを伺っていました。
でも伯爵が突然、教会を開放するって言い出して、俺たち迷ってしまったんです。伯爵はここ最近、人が違ったように静かでした。もしかして伯爵が今までのやり方を反省して変わろうとしているなら……もしそうなら危険を犯してまで、クーデターを起こす必要があるのかって。
夜になるたび話し合ったけど、意見は分かれてまとまりませんでした。
作戦は全員一致じゃないと成功しない。だから、俺たちは折り合いがつかずにずるずると日にちを伸ばしました。
そのうち祭りが始まってしまい……俺たちの反逆は立ち消えになるかもしれない、そう思い始めた時……教会が爆発したんです」
ショウは体を竦ませた。さっきのショックを思い出したのだ。
「みんな茫然と、少なくとも下級兵の俺たちは驚きで声も出ませんでした。
あの爆発物は伯爵が自分で仕掛けたんだと思う。あのとき教会の近くにいたのは一部の幹部兵だけで、下級兵はみんな城外で警備や巡回に回されていました。
高い城の壁に遮られて、爆発と花火を間違えてる奴もいました。俺たちは収集されなかった。遅れてようやく呼ばれたんです。
みんな泣きました。教会が見たくてやってきた俺のばあさんも死んだし、仲間達の知り合いや肉親も燃えました」
兵士は夢遊状態にもかかわらず苦しげに涙を滲ませた。
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